医療関係者の方はこちら

お電話でのお問い合わせ03-3399-1101(代表)

> 診療科 > 眼 科 > 疾患解説 斜視|眼科

疾患解説 斜視|眼科

> 診療科 > 眼 科 > 疾患解説 斜視|眼科

斜視(しゃし)

眼球の周りには眼球の動きを支配している筋肉が付着しています。安静時、眼の位置は左右でズレがありますが、物を見るときは、自動的に眼の周りの筋肉を調節して両眼の位置をそれぞれ目標に合わせています。年齢とともに筋力が低下して動きが弱くなったり、生まれつき左右の眼球の位置を調整する異常があったり、筋肉の眼球への付着の異常があることで、左右や上下の筋肉のバランスが崩れて、片方の目が目標に向いていても、もう片方の目が違う方向を向いてしまいます。

両目がそれぞれ違う方向を向いている状態を斜視と言います。片眼でものを見た時に、もう片眼が外を向いている時には外斜視、内側を向いていると内斜視といいます。

症状は、片目だけで見るようになったり、物が二重に見えたり(複視)、眼の位置を合わせるために筋肉に負担がかかり眼が疲れやすくなったりします。

間欠性外斜視

自力で両眼で真っ直ぐ向けるものの、外斜視にもなってしまう時がある、時々外斜視になってしまう状態です。斜視がない人よりも両目でものを見るために寄り目(輻輳・ふくそう)を強くしなければならないため、寄り目の力がなくなってくると小児の場合には外斜視で過ごす時間が長くなり、片眼だけで見ることが多くなるために、両眼視機能を上手く使えなくなったり、両眼視機能の能力が徐々に薄れてくる可能性があります。成人の場合には眼精疲労や頭痛の原因になることもあります。

斜視が出にくいように眼鏡や目の位置を動かす斜視手術をして治療します。

調節性内斜視

物体を見る時には、焦点を合わせるために調節力が働きます。調節力を使う時には寄り目(輻輳)の作用も自動的に働きます。主に小児で遠視が強く、焦点を合わせるために強い調節力を必要とした時に、輻輳の力が強く出すぎて片眼が内側に寄ってしまい、内斜視になってしまうことがあります。これを調節性内斜視と言います。過度な調節力が原因となりますので、治療は原則として眼鏡装用になります。遠視を矯正しただけでは全ての内斜視の角度がなくならない場合にはプリズム眼鏡で目の位置を矯正、もしくは斜視手術で矯正します。

先天上斜筋麻痺・下斜筋過動症

上斜筋、下斜筋は、顔を傾けても、世界が傾いて見えないように眼球が回旋して位置を矯正する筋肉です。程度が強いと正面を向いた時にも上下斜視という、片眼が正面を向いている時にも片眼が上、若しくは下を向いているようにずれてしまいます。両目でものを立体的に見ようとして自然に顔を傾けた状態で生活するために、お顔の成長に左右差が出たり、肩が片方上がってしまったり、背骨が曲がった状態で成長することがあります。

正面を向いている時に斜視がなく、顔かしげがみられない時には、定期的に両眼視力が落ちないかを検査していきます。正面でも斜視があり、また、目立つ顔かしげがある時にはプリズム眼鏡や斜視手術を検討します。

外眼筋麻痺

目を動かす筋肉全部の総称が外眼筋です。どの筋肉が麻痺しても、両眼の目の動きのバランスが崩れますので斜視になります。急に麻痺が起こると、ものが二重に見える「複視」の症状が出現します。成人してから発症することがほとんどです。重症の全身疾患がないか原因を詳しく調べます。

治療する原因がない場合には、6ヵ月程度でほぼ正常範囲まで回復する可能性があるため、すぐに手術を検討することはせず、不自由の度合いにより斜視用眼鏡を作成するなど対症療法をしながら経過観察します。6ヵ月経過しても残存している麻痺性斜視は,今度は逆にそのまま残ってしまうことが多いため、斜視の程度が強ければ斜視手術を検討します。

斜視手術

眼球に付着している筋肉の位置を変えて目の位置を矯正し、視機能の向上を促すための手術です。手術時間は、1つの筋肉につき20-40分かかります。局所麻酔で施行可能ですが、眼筋については全ての痛みを取り去ることができないため、全身麻酔の方が痛みを感じません。

手術の方法は、局所麻酔の場合は点眼麻酔をして眼の消毒をします。眼球周囲に局所麻酔薬を注入します。眼筋上の結膜を一部切開して眼筋を露出させます。筋肉の所定の位置に糸を通して、筋肉の腱を眼球から切離します。筋肉をあらかじめ決めた位置の白目(強膜)に縫い付けます。結膜を縫合して終了します。

なお、筋肉を移動させる分量については術前に調べた眼の位置ずれの角度で計算します。そのため術前に何回か検査をしますが、手術の効果は個人差が出やすく、多少の低矯正、過矯正があります。

手術後しばらくは充血、眼脂、異物感、腫れぼったい感じや引きつれ感などがあり、まぶたも腫れます。
眼球の位置が変わるため、数ヶ月から6ヵ月以上、ものが二重に見える事もあります。
眼位の戻りや、過矯正、低矯正のため、再度、手術が必要となる場合があります。

合併症に関して

術後に細菌感染を起こすことがあります。抗生物質で治療しますが、著しい場合には入院や手術が必要になることもあります。感染を起こさないよう、目は清潔に保ち、1ヵ月間はプール、海水などの汚い水が目に入らない様に気をつけてください。
手術中、眼球に筋肉を縫い付ける時に白目が薄い時など、針が白目を貫通することがあります。網膜出血や網膜剥離を来すことがありますので、術後に慎重な経過観察が必要になります。

筋肉が長期間使われない場合に、薄く細くなっているときがあり、ごくまれに手術中に切れてしまい、見失うことがあります。手術中に探し出せない場合には、CT検査などで筋肉の位置を確認して再度、手術で筋肉を探し、眼球に縫合をします。
術後は目の位置がお互いに近づきますので、それまで自覚のなかった複視が出現する場合があります。
他に大きな合併症としてアナフィキラシーショックがあり、使用する麻酔や薬剤に対して嘔吐やめまいを起こしたり、100万人に1人の確率で心臓が停止するようなショックを起こすことがあり、状況に応じて緊急の蘇生処置や入院が必要となる場合があります。

手術をしない場合

斜視は物理的な眼の位置の異常ですので、根本的に治療するには手術しかありません。しかし、斜視の角度が充分に小さい場合には、プリズム眼鏡という斜視用の眼鏡で斜視の角度や複視を軽減させることができます。視機能に問題なく、日常生活に支障がなければ、その眼鏡で経過観察することができます。

Page Top