当科の特徴
心臓疾患や血管に対して外科的治療を専門に行う診療科で、心臓のバイパス手術や弁膜症の手術、大動脈瘤手術や末梢血管の手術などを行っています。また、 2008年に当科と同時に設立された「心臓血管センター」では、循環器内科と連携した総合的な治療体制を実現しています。
着実に積み重ねてきた実績の中で、人工心臓・心臓移植以外の、ほとんどの心臓血管疾患について当センターで治療することが可能となりました。
当センターの循環器内科で検査を受けて手術が必要と診断された方はもちろん、他の医療機関で心臓や大動脈の手術をすすめられた方や緊急手術が必要な方も積極的に受け入れて心臓血管病治療における地域中核センターの役割を担っています。
東京都急性大動脈スーパーネットワークの緊急大動脈重点病院として
当院は、心血管疾患の患者さんを速やかに高度専門病院に搬送するための東京都CCUネットワークの加盟病院です。
2011年には、東京都急性大動脈スーパーネットワークの緊急大動脈重点病院に指定され、急性大動脈解離の患者さんの緊急手術・入院の受け入れを行っています。この重点病院は都内で14施設しかなく、当科は地域の急性大動脈疾患の患者さんを一人でも多く救えるよう、 24時間365日の受け入れ体制を整えています。
- 当科の注力疾患
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- 心臓弁膜症(自己心膜を利用した大動脈弁再建成術)
- 急性大動脈解離
- 胸部・腹部大動脈瘤
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 閉塞性動脈硬化症 他
特徴ある医療
自己心膜を利用した大動脈弁再建術(AVneo)
当科では大動脈弁膜症の患者さんに対して自己心膜組織を用いた弁再建術を行っています。
大動脈弁は3枚からなり、この弁に不具合があると、心臓に大きな負担がかかってきます。
「自己心膜による大動脈弁再建術」は、病気の弁を切除し、自分の心膜から作った弁で新たに形成する手術です。
この方法は病気で悪くなった大動脈弁を切除し、代わりに心膜という心臓を包んでいる薄い膜を利用して元の形どおりの新しい弁を作り直すという画期的な方法です。
この手術の最大のメリットは人工弁を使わず自分の体の組織だけを利用して行うので
- 術後の異物反応が起こらず、またその反応を押さえるための強い薬を飲む必要がない
- 人工弁を移植する方法に比べると弁口面積(血流の通り路)を大きくすることができる
- 感染に強い、経済的である、弁の開閉音が静か
など多くのメリットがあり、現在当センターでの大動脈弁膜症の手術はすべてこの方法で行っています。大動脈弁疾患でお悩みの方はぜひ一度ご相談下さい。
自己の心膜による弁再建術の流れ
①まず病気の弁を切除します
②弁のサイズを測ります
③切除しておいた患者さんの心膜から弁を3枚作成します
④薬液による固定処理をします
⑤弁を1枚ずつ縫い付けます
⑥1枚目が付いたところです
⑦3枚すべての弁が再建されました
⑧大動脈を閉じたところです
澤部長に聞く!
自己心膜を利用した大動脈弁再建術
心臓血管外科部長 心臓血管外科 澤 重治 Sawa Shigeharu
心臓血管センター長
澤 重治
医師紹介
心臓血管センター長
1983年
金沢大学医学部 卒業
1987年
金沢大学医学部附属病院第一外科
1990年
富山赤十字病院心臓血管呼吸器外科
1993年
横浜栄共済病院胸部心臓血管外科
インタビューInterview
心臓血管外科センター開設の経緯を教えていただけますか。
(心臓血管センターのご紹介はコチラ)当時の荻窪病院を取り巻く状況はどのようなものでしたか。
地域に定着してきたかなという手応えはいつ頃からありましたか。
それでは心臓血管外科について詳しくお聞かせいただけますか。
特徴として挙げられている自己心膜を用いた大動脈弁形成術について教えていただけますか。
他の手術と較べて負担や手術時間は変わりあるのでしょうか。
その後の通院などはどのような感じでしょうか。
日々どのようなことに注意しながら診療されているのでしょうか。
このページをご覧いただいている方にメッセージをお願いします!
- 「心膜」は切り取られても、その後の身体に問題はないのでしょうか?
- ありません。切り取られた箇所には代用心膜(ゴアテックス)を縫い付けます。
- 大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、どちらでも手術できますか?
- できます。数としては狭窄症の方のほうが多く、また手術の効果を高く感じられます。
- 「自己心膜」で弁を再建できるのは大動脈弁のみですか?
- 現在のところは、大動脈弁のみです。
- この手術に向いていない人は、どういう人ですか?
- 手術に耐える体力がある方ならどなたでも可能です。
以前に心臓の手術をし、自己心膜を使用できない方には、動物(ウシ)の心膜を用いることも可能です。 - 入院期間はどのくらいですか?
- おおむね2~3週間になります。
- 先生の「自己心膜を利用した大動脈弁再建術」の手術数と手術成功率(or手術死亡率)を教えてください。
- 2023年11月06日時点で、手術数は227例。成功率は100%(人工弁への変更は0例)です。