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APS療法について

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APS療法について

当院では2023年7月より、変形性膝関節症に対するAPS療法を開始いたします。
APS療法とは、ご自身の血液を使用する再生療法であり、安全性の高い治療と言えます。
「再生医療法(再生医療等の安全性確保等に関する法律)」という法律のもと、厚生労働省に届出が受理された施設のみで行うことができます。

適応について

  1. 保存療法を行ってきたが、症状が改善しない方
  2. 手術適応になっているが手術に踏み切れない方
  3. 手術を受けたくても家庭環境や社会的背景などの諸事情ですぐには受けられない方

などは、APS療法が選択肢の一つとして考えられます。一般的に膝関節の変形があまり重度でない方であれば効果が期待されます。変形が重度の方にも効果が見られたという報告がありますが、今後さらなる研究が必要とされています。変形の程度などに関わらず効果には個人差があり、治療を受けた方すべての症状が改善するというわけではありません。

グレードⅠからⅡの方が最も効果があると言われています。
一般的に、ⅡからⅢについての観血的治療では膝骨切り術、UKAの適応、ⅣはTKAの適応です。Ⅳまでいくと効果が少ないと予想されます。

費用について

APS療法はまだ日本で保険診療として認められていません。
そのため治療を希望される方は自費診療33万円(税込)となります。
例えば…両膝で治療を受けると、33万円×2=66万円(税込)となります。

  • 注射による治療日のみ自費診療となります。それ以外の通常外来・膝再生医療外来での診察は保険診療となります。
  • 自費診療のため、高額療養費制度は対象外です。

当院のAPS療法について

当院では次世代型PRP療法であるAPS療法を採用しています。
PRP(platelet rich plasma,多血小板血漿)療法は、患者さんの血液に含まれる血小板が持つ組織修復能力を利用し、治る力を高め治癒を目指す方法です。
治療は患者さんから採血した血液を遠心分離器にかけ、筋肉や腱、靭帯などの患部に注入します。
このPRPをさらに分離処理し、抗炎症成分など関節の健康に関わる成分を取り出したものがAPS(自己タンパク質溶液)です。
APS療法は、PRPに比べて抗炎症成分を多く含むため、変形性関節症の炎症を抑え、痛みが軽減されることが期待されています。
 


  1. ①採血
    APS療法では、まずAPSを作成するための血液を患者さんから採取します。
    APS治療では55ccの血液を採取しています。

  2. ②分離
    次に、採取した血液を遠心分離機にかけてAPSを抽出します。

  3. ③投与
    抽出されたAPSを患部に注入します。

 
APS療法は、患者さん自身の血液を使うので安全性の高い治療と言えます。
さらに「再生医療法(再生医療等の安全性確保等に関する法律)」という法律のもと、厚生労働省に届出が受理された施設のみで行うことができます。
合併症(主に感染)はステロイドやヒアルロン酸の関節内注射と同程度のものです。
ただし、APS療法は現在のところ自由診療であり、費用は全額自己負担となります。各医療機関によって費用は異なりますが、決して安価な治療ではありません。
また再生医療と呼ばれていますが、あくまでも炎症を抑える効果が期待されている治療であり、軟骨が再生して元の膝に戻るようなものではありません。
人によっては期待したほどの効果が得られないこともありますので、治療を受ける前に担当医とよく相談し、ご自身が納得された上で治療を受けましょう。

効果について

早い方では1週間で効果が表れたというケースもありますが、3ヵ月~6ヵ月で症状の改善を実感することが多いようです。
効果の持続期間は一般的に約1年といわれていますが、1年以上持続しているケースも報告されています。
身体への侵襲が小さいため高齢者でも治療を受けることが可能で、特に年齢制限などはありません。
効果を実感できた方で、ある程度の期間を経て痛みが再発した場合は、再度治療を行うことも可能です。
ただし、「あまり効果が実感できない」「数ヵ月で痛みが再発した」という方がズルズルと治療を繰り返すことはおすすめできません。

治療後の留意点

通常、1週間程度でおさまりますが、腫れや痛みが軽減するのであれば患部を冷やして対応するようにしてください。
痛みを抑えようと、消炎作用のある鎮痛剤を使用すると効果が低減する可能性があります。
そのような場合は、アセトアミノフェンなど抗炎症作用のない鎮痛剤を使用するようにしましょう。
また、痛みが取れたからといって急に活動性を上げるのは禁物です。治療後約2週間は、治療前より膝関節に負荷をかけないようにしてください。

治療の流れ

初診は金曜日午前の「膝再生医療外来」になります。完全予約制ですのでご予約の際はお電話をお願いします。

  • 膝再生医療外来にて診療内容をお話しの上、説明書をお渡しします。
    その後、通常の火曜日・木曜日外来(森山医師)で相談に応じます。治療内容を理解し納得いただけましたら同意書に署名と日付を記載いただきます。
    注射による治療は金曜日の膝再生医療外来にて行います。
  • MRI等の画像をお持ちの方は持参ください。なお、お持ちでない方は撮影が必要となります。

注射による治療時(金曜・膝再生医療外来)の1日の流れ

  1. 採血

    本館1階の処置室
    (整形外科手前の右手側)
    にて採血

  2. 待機

    APS作成中は整形外科外来の
    待合室にて待機
    (約30分~1時間)

  3. APSを注射

    診察室にてAPSを注射

※注射による治療後、翌週に診察し感染がないか確認します。その後はおおよそ1・3・6・12ヵ月後に診察します。

教えて!森山先生 APS療法のあれこれ

PRP療法とAPS療法の違いを教えてください。
PRPは傷んだ組織を治す力、APSよりは弱いですが抗炎症作用があります。
PRPは関節内にも注射しますが関節外で肘外上顆炎、アキレス腱炎などの治療にも使用できます。
APSは組織を治す力はありません。抗炎症作用が強いです。
また、APSは関節内の治療にしか使えません。
費用が高額で効果もよくわからない箇所があり不安です。
効果は3~6ヵ月で症状の改善を実感できる場合が多く、持続期間は約1年間と言われています。
また高額療養費制度は対象外となっています。
不明点がありましたら、金曜日の膝再生医療外来にてぜひご相談ください。患者さんの最善を一緒に考えていきましょう。
注射治療後のフォロー診療中に、変形性膝関節症に対する人工膝関節手術を受けることは可能ですか? 可能な場合、時期を教えていただきたいです。
可能ですが、まず半年は経過をみることをおすすめします。

患者さんへのメッセージ

超高齢化社会において膝関節症は多くの人の生活の質を落とす最大の疾患となっています。その中で、APS療法は再生治療として登場した新たな治療です。
当院は、変形性膝関節症に対する手術治療(人工膝関節置換術・骨切り術など)もできる病院です。さまざまな選択ができる当院で患者さんにとってのベストな方法を一緒に探し、提供していきたいと思います。ぜひ遠慮なくご相談ください。
 
膝関節センター長
整形外科医長
森山 一郎

医師紹介

整形外科

膝関節センター長
整形外科医長

森山 一郎

Moriyama Ichiro

入職
2018年
主な専門分野
膝関節
認定資格・所属等Qualification / Affiliation
  • 医学博士
  • 日本整形外科学会整形外科専門医
  • 日本整形外科学会研修指導者
  • 日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会
  • 日本人工関節学会
  • 中部日本整形災害外科学会
  • Ligament reconstruction seminar
  • UKA seminar
経歴History
1990年 島根医科大学医学部 卒業
1990年 慶應義塾大学病院 整形外科
1991年 慶應義塾大学関連病院を複数勤務
2002年 University at Buffalo, The State University of New York
2003年 米国New England Baptist Hospital
2004年 済生会宇都宮病院 整形外科
2006年 けいゆう病院 整形外科
2008年 済生会宇都宮病院 整形外科
メディア実績・著書Media / Book

・手術数でわかるいい病院 2014 朝日新聞出版
・手術数でわかるいい病院 2015 朝日新聞出版

メッセージMessage

健康の維持には歩けることは大切なことですが、ひざ関節が丈夫であることは重要な要素です。ご高齢の方であれば関節軟骨の変性、骨の変形などによる変形性膝関節症になりやすく、その予防、そして人工関節、骨切りなどによる治療を行っています。また若い方であればスポーツなどによるけがで膝関節の軟骨、半月板、靭帯などをいためることがありMRIなどによる診断、保存的または手術などによる治療をおこなっています。

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